少し話が逸れてしまうかも知れませんが、
知っている曲をアカペラで歌ったときに、
「原曲Keyで再現できる能力」※
を「絶対音感」だと言う人もいますが、
それは単にその曲の音高が記憶されているだけで、
音楽的に音高を判別する能力とはまた別の能力だと
私は考えています。
絶対音感は音高を1つ1つ記憶していると言う説を
今でも時々目にすることがありますが、
それでは「オクターブエラー」の説明が付きません。
少なくとも音名の判別は無意識下で行われるもので、
記憶にある音高と比較すると言った作業を意識的に
行っている絶対音感者はいないのではないでしょうか?
「そもそも『記憶』とは何か?」
特に音(音高)が最終的にどのような形(信号)で
人間の脳に記憶されているのか?私には想像も付きませんが、
(考え出したら、夜眠れなくなってしまいそうですが・・・)
おそらく、絶対音感が音名を判別するために必要な情報は
人間が通常読み書きしている記憶領域に保存されているのではなく、
クロマ(周波数比)を認知する仕組みの中に組み込まれていて、
それは感覚器官に依存した形で実現されているのでは?
と私は考えています。
「年齢と共に半音(2半音)ずれて聴こえるようになった」
と言う絶対音感者の話を聞いたことがありますが、
例えばこれは感覚器官が年齢と共に硬化等の原因で変化し、
音の伝わり方が変わり、感覚的にずれて聴こえるようになったと、
つまり「記憶が変化」したのではなく、「感覚が変化」したと
考えることはできないでしょうか?
また、同じような現象で絶対音感者は一部の風邪薬を服用すると
音高がずれて聴こえると言う話を聞いたこともありますが、
人間の感覚や記憶と言うもの、また絶対音感を考える上では
いずれも興味深い現象です。
「絶対音感は音名のクロマを聴き分ける」
と言われていますが、実際には
で取り上げたように、
「音名自体にクロマは存在し得ません。」
では、
「なぜ絶対音感者は音名にクロマを感じるのか?」
実はここに何か重要なヒントが隠されているのでは?
と私は考えています。
絶対音感の終焉