「絶対音感の終焉」

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『絶対音感の終焉』へようこそ!

 

さて、いきなりですがここで「クイズ」です。

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これは、

絶対音感と脳(側頭平面)の発達」

を主張する人達がこぞってその根拠としている
シュラーグ博士の論文(米サイエンス誌、1995/2/3)
から抜粋した実際のデータです。

「A、B、Cのうち、
 絶対音感の音楽家の脳はどれでしょうか?」

 

乳児は絶対音感で音を認識している、つまり

「生まれたときは誰しも絶対音感」

と言う実験結果が『歌うネアンデルタール』の中で
報告されています。
そして、多くの人は脳の発達と共に、

絶対音感相対音感に取って代わり」

自然と絶対音感を失うそうです。
絶対音感と聞くと、

「脳が発達することで実現されている」

ような印象を受ける人もいるかも知れませんが、逆に

「脳の発達が抑制されることで実現されている」

可能性を示唆する非常に興味深い報告です。
また、絶対音感を持った動物が存在すると言う報告も
あるようですが、それはその動物が人間ほど知能が
発達していないとも考えられます。

 

実際、この変化は絶対音感訓練時の「移調のミス」
呼ばれる現象に顕著に現れています。
移調のミスとは簡単に言えば聴音で、

「固定ドの『ド』を『ド』と答えていた子が
 移動ドの『ド』を『ド』と答えるようになる」

現象で、この移調のミスが起き始めると
絶対音感を身に付けるのは難しいと言われています。
しかし、固定ドの「ド」を「ド」と答えていた子が
移動ドの訓練を始めた訳でもないのに自然と、
そしておそらくは移動ドと言う概念すら知らずに
固定ドの「ド」を「ド」と答える感覚と同じ感覚で、

「移動ドの『ド』、つまり調性上の主音」

を「ド」と答えるようになるこの現象、
よく考えたらとても不思議な現象だと思いませんか?
そして、人間の成長過程から見れば正常な傾向である
相対音感の発現が絶対音感訓練の中では、

「移調のミスと称され、悪い傾向」

とみなされている点も注目したいところです。

 

絶対音感は脳の発達の抑制によって実現される
と言う考え方に対しては、

絶対音感相対音感は共存できる」

と言う反論が聞こえてきそうですが、
絶対音感保持者が相対音感と称しているのは、
それは相対音感ではなく、

「絶対音感上で相対的に処理する能力ではないか?」

と私は疑いを持っています。
宮崎謙一教授の『絶対音感神話』の中で、
移調条件下でのメロディ比較における正答率が
絶対音感群と比べ絶対音感群のほうが低い、
言い換えれば絶対音感群のほうが、

「移調のもとでの等価性の判別が不正確」

と言う実験結果が報告されていますが、
絶対音感が本来人間の持つ音楽的に音を捉える能力、
相対音感とは全く別の次元で音高を特定することに
特化したプラスαの能力として実現されていれば、
絶対音感があったとしても移調のもとでの等価性を
同じように判別できるのではないでしょうか?
絶対音感保持者が移調を苦手とするのも同じこと)

 

ここで相対音感についても触れておきたいと思います。
みなさんは階名/移動ドを単なる「間隔尺度」のように
ものさしがスライドするイメージを持っていませんか?

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しかし実際には周波数上、半音は等間隔に並んでおらず、
ものさしをスライドしても目盛りが合いません。

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階名/移動ドの実体は「絶対零点を持つ比率尺度」で、
ものさしが伸縮するイメージになります。

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譜例は単純に「ドレミファソラシド」の繰り返しですが、
次の「ドレミファソラシド」に移るとき、
1/3音、1/4音、1/5音、1/6音と
半音より狭い間隔で徐々にピッチが上がっていきます。

 音量注意!

このとき、ピッチが上がった瞬間「ズレている」と言う
違和感が生じますが、その感覚はすぐに喪失しませんか?
これは目が物を見るとき、対象物との距離に応じて、

「レンズのピント調節機能」

が自動的に働いているのに似ています。

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実は相対音感の本質はこのピント調節機能のように、

「ものさし(の単位≒基本周期)が伸縮する」

ところにあって、例えば「音程が分かる能力」のように
決してそんな単純な能力ではありません。
(そもそも2音X、Yの音高が求まらずして、
 一体どんな原理で音程だけが求まるのでしょうか?)
一般的に言われている相対音感の特徴、
例えば音程やハモリ、階名/移動ド唱や移調唱、
移調のもとでの等価性はものさしが伸縮することで、
あるいは伸縮した結果実現されることの一部分を
指しているに過ぎないのではないでしょうか?
(ただし、これらの特徴は効率の違いはありますが、
 必ずしもものさしが伸縮しなければ実現できない
 と言うものでもありません)

ものさしが伸縮してしまったら、

「一貫した正確な量を測れなくなってしまうのでは?」

と心配する人がもしかしたらいるかも知れませんが、
誰もが当たり前のようにものさしが伸縮することで
柔軟に対応している音楽的な要素があります。

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そう、それは「リズム」です。

 

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ようやくここで最初のクイズに戻りますが、
絶対音感の音楽家の脳は

「右脳が一番小さい『A』」

になります。
この論文の後にシュラーグ博士は

「絶対音感の脳の左右差は右脳の剪定によって起こる」

と言う論文をキーナン博士らと共著しています。
また、『歌うネアンデルタール』の中では、

「(言語学習に問題のある)自閉症や音楽サヴァンには絶対音感が多い」

と言う研究結果も報告されています。
いずれの研究結果も、

絶対音感と脳の発達の抑制」

を疑わせる興味深い報告だと思いませんか?

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クロマで迫る音感の正体 ~絶対音感の終焉~

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