ここで、
「周波数と音名と階名の関係性」
について改めて考えてみたいと思います。
上図は何となく私が予想する一般的なイメージですが、
実際には周波数上、半音は等間隔に並んでいないため、
目盛りをそのままスライドしても目盛りが合いません。
音律は周波数の「差」ではなく、「比」なので、
「スライド」ではなく、「伸縮」する必要があります。
相対音感を言葉で説明するのは非常に難しいのですが、
この図はその本質を見事に体現しています。
まず、階名/移動ドの実体は単なる
ではなく、音名/固定ドと同じく、
「絶対零点を持つ比率尺度(比例尺度)」
であることが分かります(音程計算にはこれを
「対数間隔尺度」
として利用していると考えられます)。
また、音名は階名(の無限に存在する縮尺率)の
「ある一時点を指しているに過ぎない」
ことが分かります。
だから、例えば階名の縮尺率が下図のような場合、
音名で測定するのは困難になります。
「相対音感は2つの音を比べたとき、
どちらが高いか?あるいはその音程が分かる能力」
と言った説明をしばしば見掛けることがありますが、
このように縮尺率(≒基本周期)を決定するためには、
「個々の音高、個々の音程」
と言ったミクロな単位ではなく、
「全体のバランス、音のまとまり(ゲシュタルト)」
と言ったマクロな単位で捉える必要があることからも、
相対音感は決してそのような単純な能力ではないこと、
そうした説明がいかに的を射ていないかが分かります。
確かに2つの音が提示されたとき、
その音程が分かると言う人も多いと思いますが、
実はその「2音」と言う関係性もまたゲシュタルト、
言ってみれば、
なのでは?と言う話は以前にもした通りで、
決していきなりポンと音程だけが求まるのではなく、
基本周期が決定して初めて音程や階名が求まります。
これは、
のと全く同じ道理です。
ちなみにこの原理はリズムを捉える原理と全く同じです。
音の高さとリズムでは一見全く異なる概念のようですが、
音の高さを表す周波数(1秒間の振動数)と言う単位は
周期(1回の振動に要する時間)の逆数を取ったもので、
実はどちらも
「時間」
と密接な関係にあります。
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