調が変わる度に単位となる基本周期が伸縮してしまったら、
「一貫した正確な量を測れなくなってしまうのでは?」
と心配する人がもしかしたらいるかも知れませんが、
実は誰もが当たり前のように、
「単位を伸縮することで柔軟に対応」
している音楽的な要素があります。
「カラオケでキーを変更すると唄えない」
と言う人は聞いたことがありますが、
「カラオケでテンポを変更すると唄えない」
と言う人は聞いたことがありません。
そう、それは「テンポ(リズム)」です。
例えば、
「♩= 60のとき、1拍の長さ=1秒」
テンポを倍にすると、
「♩=120のとき、1拍の長さ=0.5秒」
になりますが、テンポを倍にしたからと言って、
「どうして1拍は1/2拍にならないのか?」
と文句を言う人はおそらくいないでしょう。
どのようなテンポでも、♩=60でも120でも
テンポに応じて1拍の長さが伸縮することで、
「1拍は1拍(4分音符は4分音符)」
であることに変わりはありません。
これは何調でも、ハ長調でもホ長調でもト長調でも
調に応じて基本周期が伸縮することで、
「階名/移動ドの『ド』は『ド』(主音は主音)」
であることと全く同じ原理です。
もし1拍の長さが伸縮せずに固定されていたら、
「テンポが2倍になれば4分音符を8分音符に、
テンポが半分になれば4分音符を2分音符に置き換える」
と言った面倒な操作が発生してしまうのと同様、
もし基本周期が伸縮せずに固定されていたら、
例えばカラオケのキーを+2する(1音上げる)場合、
「『ド』を『レ』に、『レ』を『ミ』にずらす」
と言った面倒な操作が発生してしまいますが、
実際にはそうした面倒な操作をすることなく、
「『ド』は『ド』のまま、『レ』は『レ』のまま」
単位となる基本周期が伸縮するだけで、
具体的には伸縮した基本周期、つまり調に合わせて
周波数成分を「逆フーリエ変換」することで、
「調、あるいは基準ピッチのあらゆる変化に柔軟に対応」
することができます。
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