「クロマは音名が持つ性質」だと仮定します。
前回のブログにも書きましたが、
基準ピッチは人間が便宜的に定めたもので、
そこに科学的、音楽的な根拠はありません。
周波数440Hzの音が元々音名「A」の音だった訳ではなく、
人間が基準ピッチをA=440Hzと定めることで初めて
周波数440Hzの音が音名「A」の音になります。
基準ピッチをA=415Hzと定めれば、
周波数415Hzの音が音名「A」の音になります。
当然のことですが、基準ピッチが何であろうと
周波数440Hzの音は周波数440Hzの音、
周波数415Hzの音は周波数415Hzの音で
その音の「物理的な性質」自体が変わることはありません。
しかし、「音名のクロマ」と言うことは、
基準ピッチをA=440Hzと定めれば周波数440Hzの音が、
基準ピッチをA=415Hzと定めれば周波数415Hzの音が
音名「A」のクロマを持つようになると、
つまり、
「人間が論理的に基準ピッチを定めるだけで、
音の物理的な性質まで変わる」
ことになってしまいます。
話は少し変わりますが、基準ピッチがA=415Hzだった時代に
例えばハ長調(C Major)で作曲された曲があったとします。
「Keyにはちゃんと意味があり、原曲Keyで再現すべきだ」
と言った発言を耳にすることがありますが、
基準ピッチA=440Hzの時代の今、
この曲をハ長調で再現してしまうと、
当時よりも物理的には半音高くなってしまいます。
と言って、物理的に同じ高さで再現しようとすると、
ロ長調(B Major)になってしまいます。
こうした矛盾も突き詰めれば同じ問題にたどり着きます。
トーン・クロマは「周波数比」から生じます(「クロマとは?」参照)。
(「ドレミファソラシド」は
「音律」と呼ばれる「周波数比」が基盤になっています)
「(周波数)比」と言うことは、
「(音を)比較する」ことで初めて生じる性質だと言うことです。
「音を比較する」と言うことは、比較の「基準」となる概念が必要になります。
そこで、本書ではまずこの基準となる概念、
「クロマ基準音」
を新たに定義し、そしてこの「クロマ基準音」を軸に話を展開していきます。
興味のある方は是非読んでみてください。