そもそも曲の中には、
「この音が調(調性上の主音)ですよ」
と言った目印がある訳でもないのに、
「どうして基本周期が自然と調に設定されるのか?」
今回はそんな基本周期、そして調性音楽の不思議を
ほんの少しだけ考えてみたいと思います。
まずはゲシュタルトの最小構成単位と考えられる
2音が提示されたときにどのように認知されるか?
を以下の3通りのパターンでテストしてみました。
①同時に提示(和声的音程)
②別々に提示(旋律的音程)~1音目が2音目より低い
③ 〃 ~1音目が2音目より高い
私の場合、音が提示される順番や音程にかかわらず、
低いほうの音が「ド」として認知される、つまり
「低い=周期の長いほうが基本周期に設定される」
と言う結果が出ました。
音高と音程の判別が別々の仕組みで実現されている
イメージを持っている人も多いかも知れませんが、
「音高も音程も同じゲシュタルトの一要素に過ぎず、
ものさしの目盛りが指す値を読み取れば音高に、
目盛りと目盛りの幅を読み取れば音程になる」
それはものさしが固定されていようが伸縮しようが
同じことだと私は考えています。
宮崎謙一教授の『絶対音感神話』にはたった3つの音程、
短3度と長3度と完全4度を判別するテストの正答率が、
と言うこれもまたおもしろい結果が出ていましたが、
これは相対音感では周波数成分の分析結果sin ntのnが
階名や音度(調性上の主音との音程)に対応するため、
先ほどのように2音の場合に限っては単純に、
「音度≒音程」
と考えられるだけなのでは?と私は考察しています。
では、これが3音以上になるとどうなるでしょうか?
例えば長三和音の場合、基本形は「ドミソ」ですが、
第1転回形は「ミソド」、第2転回形は「ソドミ」と
聴こえることから一番低い音が基本周期になる訳でも、
また「CDEFGABC」と「ABCDEFGA」では
前者は「C」、後者は「A」が基本周期になることから
その構成音だけで基本周期が決定する訳でもなく、
音が提示される順番も影響していることが分かります。
「調性音楽がどのような仕組みで人間に認知されるか?」
についてはまだ科学的に解明されていないと思いますが、
実は、
「それこそが相対音感なのでは?」
と私は考えています。
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