「Cメジャースケール」と「Dメジャースケール」
前者は基本周期を「C」、後者は「D」、
つまり、調に合わせて周波数成分の分析を行うと、
周波数成分sin ntのnはどちらも同じ、
「n=1,9/8,5/4,4/3,3/2,5/3,15/8,2(純正律の場合)」
になります(これは「音律」と一致します)。
そのため、2つのスケールを相対音感で聴き比べると、
「両者は明らかに違う高さ」(トーン・ハイト層)
に聴こえるにもかかわらず、どちらも同じ
「ドレミファソラシド」(トーン・クロマ層)
に聴こえます。
これは形は同じでも大きさが違う、いわゆる
「相似図形」
を見ている感覚に例えられますが、実際
にあります(移調は周波数の加減ではなく、乗除)。
ここで重要なポイント、それは
「大きさの違いは形の認識に干渉しない」
つまり、
「ある図形(曲)を拡大縮小(移調)したからと言って、
その図形が別の図形に見えることはない」
と言うことです(いわゆる「移調のもとでの等価性」)。
しかし、移調条件下でのメロディ比較における正答率が、
と言う結果(宮崎謙一教授著『絶対音感神話』より)、
これは例えるなら絶対音感群のほうが、
「大きさの違いが形の認識に干渉している」
と言うことになります。
絶対音感保持者が階名/移動ド唱、あるいは移調唱に
対応できない状態を「相対音感がない」とは言わず、
あるいは、
と言った表現が用いられることがありますが、
これが具体的にどのような状態を指しているのか?
残念ながら私には正直、サッパリ分かりません。
しかし、それぞれの音感に対して強い弱いではなく、
「~よりも」と2つの音感が強い弱いの比較対象に
なっているところが興味深いところです。
と言った主張を見掛けることもありますが、
両者が独立した感覚であれば互いに干渉することなく、
どちらの基準にも自在に合わせられそうなものですが、
強弱の比較対象の関係にあると言うことは少なくとも
絶対音感は本来人間が音楽的に音を認知する仕組み、
相対音感から完全に独立した感覚ではなく、
「相対音感に干渉、あるいは競合する形で実現」
されていると言えるのではないでしょうか?
絶対音感が周波数成分の分析結果、sin ntのnには
何ら影響を与えない形で実現されているのか?
それとも、
「周波数成分の分析結果そのものを変えてしまう」
ことで実現されているのか?
この辺りも焦点になるのではないでしょうか?
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