絶対音感は合成波から取り出された個々の周波数成分から
直接(周波数成分を分析する前に)音名を判別している、
つまり、
「周波数成分の分析を介さずに実現されている」
と仮定してみましょう(仮説①)。
この段階ではまだ合成波から周波数成分を取り出すだけで
周波数成分同士の関係性については分析されておらず、
周波数の大小に対応した単純に音が高い低いと言う感覚、
いわゆる、
「トーン・ハイト」
で音名を判別することになると考えられますが、この考え方は
と呼ばれる現象の説明がつかないと言う話は以前にもしました。
また、
「絶対音感は耳の蝸牛内の基底膜の
(周波数に対応した)振動位置を記憶している※」
と言うさらに具体的な仮説を聞いたこともありますが、
よく考えてみればその仮説では音名を判別できるのは、
「実際に物理的に鳴った音、つまり基底膜が振動したとき」
に限定されてしまうのではないでしょうか?
それでは頭の中にイメージしたメロディを譜面に起こすことも、
譜面から頭の中に曲をイメージすることもできないはずです。
※蝸牛、基底膜等の耳の具体的な仕組みは、
「其の二」で紹介している動画を参照してください。
そもそも音名は周波数を「比」で区切ったものです。
「音名を判別する」と言うことは即ち周波数の比を取る、
つまり個々の音ではなく、
「音の関係性で捉えている」
と考えるのが自然だと思いませんか?
実際、絶対音感訓練では単音→和音ではなく、
から始めるそうです。
最相葉月さんの『絶対音感』にも和音を記憶することが
どうして絶対音感獲得につながるかは証明されていない
趣旨の記述がありましたが、単音で身に付かないものが和音、
つまり音の関係性を作り出すことで身に付くと言うことは
単純に考えて個々の音ではなく、音の関係性で捉えている、
つまり、
「周波数成分の分析を介して実現されている」
と考えるのがやはり自然だと思いませんか?
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