元々「長旋法/短旋法」と訳されていたものが、
と呼ばれるようになったのも、
また「調」、あるいは「調性格」の意味合いで、
「調性」
と言う言葉が使われてしまうのも、
2次元(相対音感)の世界の概念を
1次元(絶対音感)の世界から眺めた結果、
「異なる概念に映ってしまったからではないか?」
と私は考えています。
「其の十六」でも触れた通り、
元来「調」と「旋法」は異なる次元の概念ですが、
1次元(絶対音感)の世界では調が変わると旋法と同様、
「クロマの組み合わせが変わってしまう」
ため、調と旋法を混同してしまったのではないでしょうか?
また、2次元(相対音感)の世界では、
「調 ≠ 調性 ≠ 調性格」
とそれぞれ明らかに異なる概念ですが、
1次元(絶対音感)の世界では調が変わると
固定ド次元(トーン・クロマ次元)が変化、
つまり、
「調によって調性や調性格に
差異が生じるようなシステム」
とも言えますが、結果的に
「調 ≒ 調性 ≒ 調性格」
のように映ってしまうのかも知れません。
そして、1次元(絶対音感)の世界から眺めることで
言葉の意味が変わってしまったその最たる例が、
元々階名(移動ド)のシラブルであった
「『ドレミファソラシド』を
音名(固定ド)のシラブルに転用してしまったこと」
ではないでしょうか?
ここで非常に興味深い事実を1つ、
東川清一先生の『シャープとフラットのはなし』によると、
全20巻にもおよぶ世界最大の音楽辞典、
『ニューグローブ音楽辞典』(1980年版)には、
「移動ド/固定ドと言う項目が存在しない」
そうです。
移動ド/固定ドと言う言葉は、元々
階名のシラブルであった「ドレミファソラシド」を
音名のシラブルとして誤って転用してしまったことで、
この2つを区別するために生まれてしまった
本来、「不要な用語」と言えるでしょう。
本記事では敢えて移動ド/固定ドと言う言葉を使いましたが、
実は私自身「移動ド/固定ド」と言う言葉が大嫌いで、極力
「階名/音名」
と言う言葉を使うようにしています。
(了)
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