前半に登場した「サイエンス」誌の記事は1995年のものでした。
そして2001年、Julian Paul Keenan博士が
「Absolute Pitch and Planum Temporale」(←原文のPDFにリンク)
と言う論文の中で、
「絶対音感者の脳(側頭平面)の左右差は右脳の"pruning"によって起こる」
と言う研究結果を発表しています。
"pruning"には「剪定」(枝を刈る)と言う意味があるようですが、
ここでは発達の「抑制」や「阻害」と言った意味合いに
近いかも知れません。
英語が分からない人もPDFの4ページ目の画像を見れば
(上が非絶対音感の非音楽家、下が絶対音感の音楽家で右が右脳)、
「絶対音感者の右脳が明らかに小さいこと」
が確認できると思います(右下の赤い部分、AP=絶対音感)。
この論文は『音と文明 音の環境学ことはじめ』(大橋力さん著)で
分かりやすく取り上げられています。
「絶対音感」「左脳」「2倍」のキーワードで
ヒットしたサイトを要約すると、
・絶対音感者の左脳はそうでない人の2倍に発達
・それが科学的に立証されている
・絶対音感教育は左脳だけでなく、右脳も発達する
だそうですが、私には「サイエンス」誌の記事から
そのような内容は読み取れません。
また、Keenan博士の論文と併せて考えると、
・絶対音感者の左脳はそうでない人と比べ、少しだけ大きい
(ただし、統計的有意差はない)
・統計的な検証であって、まだ科学的には立証されていない
・絶対音感教育は右脳の発達を阻害する疑いがある
と全く反対の内容が読み取れます。
もし将来、
「絶対音感教育は右脳の発達を阻害する」
と科学的に立証されたとしたら、
みなさんはそれでも絶対音感を手に入れたいと思いますか?
本書では本記事とはまた違った視点から
絶対音感の問題について言及しています。
興味のある方は是非読んでみてください。
「絶対音感は左脳が発達」のウソ
続「絶対音感は左脳が発達」のウソ