例えばパッと聴いたフレーズが、
「何拍か?」
をカウントすることは人間にとっては簡単なことです。
しかし、これと同じことを機械的に実現するとなると、
実はそんな簡単な処理ではないことに気付かされます。
その一番の原因は拍が、例えばBPM 60なら1拍は1秒、
BPM 120なら1拍は0.5秒のように
「一定量を指し示していない抽象的な概念」
だからではないでしょうか?
(BPMが与えられれば「秒⇔拍」の変換はできますが、
それは拍をカウントすることとは意味が違います)
しかも人間は途中で突然テンポが変わっても、
さらにはrit.のように徐々にテンポが変わっても、
その変化に応じて、
「1拍の長さをダイナミック(動的)に伸縮」
することで拍を正確にカウントすることができますが、
よく考えたらとても不思議なことだと思いませんか?
では、どうして人間は、
「この長さが1拍ですよ」
と言った目印がある訳でもないのに当然のように
1拍を1拍として認識することができるのか?
これはとても難しい問題ですが、少なくとも
「個々の音の長さ(ミクロな単位)」
から、逆に言えば、
「全体的な音の長さの比率(マクロな単位)」
で捉えない限り、1拍を算出することはできません。
「ストップウォッチでは拍をカウントできない」
ように、たとえどんなに正確に秒を測定できても 、
拍をカウントすることはできません。
逆に言えば、
「拍をカウントするのに秒を測定する能力も、
また算出された1拍が何秒か?が分かる必要もない」
と言うことです。
こうして考えてみると、リズムは秒のような
「スタティック(静的)な基準、固定的な単位」
では決して捉えられない、逆に拍のような
「ダイナミック(動的)な基準、可変的な単位」
だからこそあらゆるテンポに柔軟に対応できることが
分かります。
このように普段人間が何気に簡単にやっていることも、
いざ機械的に実現しようとしたら難しいと言うことは、
音楽に限らず他の分野でもよくあることだと思います。
そして、実はもう1つ音楽上の概念で拍と同じように
一定量を指し示していない抽象的な概念が存在します。
そう、それはみなさんの大好き?な
「階名/移動ド」
です。
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