例えば、
「絶対音感は1音1音を記憶している」
「相対音感は音と音の距離(音程)を記憶している」
「仮性絶対音感は記憶された1音と比較している」
と言った具合に音感に関する記述を読んでいると、
「記憶と言うキーワード」
が漠然と使われているのをしばしば見掛けますが、
音感に限らず何かを識別するには記憶が介在している
であろうことは誰もが予想するところです。
音高にしろ音程にしろ物の連続量を表現するには
単位が必要ですが、同じ音高でもそれを表現する
つまり記録(記憶)形式は無限に存在するはずで、
問題はそれが何を単位とした、
「どんな概念、どんなフォーマットで記憶」
されているかではないでしょうか?
音名を特定するためには基本周期と周波数成分
(調と階名)の両方が求まる必要がありますが、
「相対音感は周波数成分(横軸)の記憶」
(階名は特定できるが、調は特定できない)
のため、相対音感だけでは音名を特定できません。
そこで意図的に基本周期を記憶された1音に
固定することで擬似的に絶対音感のように
音名を特定しようと言うのが仮性絶対音感ですが、
この「1音を記憶する」と言う能力自体は
基本周期(縦軸の1点)の記憶、つまり
潜在的絶対音感に属するとも考えられます。
ちなみに単に「1音を記憶する」と言っても、
①その1音をイメージできる
(a)無音の状態で
(b)曲を聴きながら(曲に邪魔されることなく)
②仮性絶対音感の基準音にできる
(c)『よくある一般的な絶対音感テスト』のように
1音だけ提示された場合のみ音名を特定
(d)『30秒でできる絶対音感テスト』のように
曲(ゲシュタルト)の中でも音名を特定
③その他
(e)曲の中で記憶された1音と一致する音名のみ特定
と言ったいくつかのレベルが考えられますが、
私の予想では(a)や(c)ができると言う人は珍しくなく、
逆に(e)、例えばA=440Hzの音叉の音だけを記憶し、
曲の中でも調に関係なく、
「音名『A』の音だけは特定できる」
と言う人は珍しいのではないでしょうか?
最後になりますが、ある音高を頭に思い浮かべる、
つまり、
「記憶を喚起」
するにはどんなフォーマットで記憶されているか?
(少なくともそれは「周波数ではない」のでは?)
そのフォーマットに対応した概念で喚起するのが
一番理に適っていると思いませんか?
そうした観点から、
「音名/固定ド唱 VS 階名/移動ド唱」
について考えてみるのもよいのではないでしょうか?
(了)
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