もし絶対音感保持者の中に、
「ものさしが伸縮する感覚が分からない」
と言う人がいてもそれは何ら不思議なことではなく、
なぜなら絶対音感の習得には相対音感が発現していない、
言ってみれば、
「ものさし(≒基本周期)が伸縮しないこと」
が前提条件とされているからです。
相対音感のようにものさしが伸縮してしまったら、
音名の判別ができなくなってしまうであろうことは
誰にでも分かる簡単な理屈です。
逆に相対音感のようにものさしが伸縮しなければ、
つまり固定されたものさしにラベリングできれば、
それは絶対音感になり得るのではないでしょうか?
と称し、この移調のミスを起こすようになると
絶対音感を習得するのは難しいと言われていて、
このミスが起きないように訓練が行われるそうです。
では、
「どうすれば移調のミスが起きないか?」
答えは簡単です。それは、
「移調しないこと」
です。
移調することなく、特定の調だけで訓練を行った場合、
「基本周期が伸縮せず、常に一定の基本周期」
で周波数成分の分析が行われることになりますが、
この訓練を続けることで基本周期の伸縮が抑制され、
「基本周期が固定されたまま周波数成分の分析を行う
回路が定着してしまうのでは?」
と私は大胆に予想しています(つまり、仮説③)。
この考え方は、どうして絶対音感が単音ではなく、
と言う疑問にも説明が付きます。
ちなみにピアノには1曲を全ての調に移調して練習する
「全調メソード」
と呼ばれる素晴らしいメソードがあるそうですが、
絶対音感の習得には不向きと言う意見があるようです。
逆にピアノに限らず初級者のうちは指使いが簡単な
ハ長調の課題曲で練習することも珍しくありませんが、
調が特定されることで結果的に基本周期が固定され、
絶対音感を意識していない練習でも絶対音感の習得に
つながる可能性も考えられるのではないでしょうか?
絶対音感の習得には相対音感が発現していないことが
前提条件と言われている一方で、
とも言われていますが、相対音感が発現しないことで
絶対音感が実現されていると考えるのであれば、
「絶対音感習得の前であろうが後であろうが…」
と素朴な疑問を感じるのは私だけでしょうか?
これは例えるなら、AさんとB君の話だったつもりが、
いつの間にか気付かない間にB君がC君に入れ替わり、
AさんとC君の話にすり変わっていたことに気付かず、
その矛盾が解けない、そんな小説を読んでいる気分です。
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