実は基本周期となる音名(周波数)が求まらなくても、
周波数成分sin ntのnだけで音名を判別する方法が
1つだけ考えられます。
それは、
「相対音感のように基本周期が調に合わせて伸縮しない」
つまり、
「基本周期が特定の音名(周波数)に固定されている」
場合です(仮説③)。
基本周期が特定の音名に固定されていると仮定すると、
・聴音は階名/移動ドではなく、音名/固定ド
(周波数成分sin ntのnは音名/固定ドの概念に対応)
・移調のもとでの等価性が成立しない
移調すると平均律でも調によって差異が生じる
(移調すると周波数成分sin ntのnが変わる)
・基準ピッチの変更に影響を受ける
(基本周期が固定→基準ピッチに合わせることができない)
・移調唱(カラオケでのキー変更)が苦手
(基本周期≠調→単純に逆フーリエ変換では対応できない)
・転調時に聴音で迷子にならない
(基本周期が固定→転調しても基本周期が変わらない)
・無調でも聴音できる
(基本周期が固定→調性の有無に影響を受けない)
このように相対音感の特徴とは対照的になります。
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ちなみに、
「絶対音感保持者でも移調された曲が同じ曲だと分かる
(故に絶対音感保持者にも相対音感がある)」
と言う反論を何度かいただいたことがあるのですが、
一口に「同じ」と言ってもその判断基準は様々です。
音楽的に「同じ」と言えば、それは
「移調のもとでの等価性」
を意味しますが、宮崎謙一教授の『絶対音感神話』にて、
移調条件下でのメロディ比較における正答率が、
つまり、絶対音感群のほうが
「移調のもとでの等価性の判別が不正確」
と言う結果が出ています。
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