ある曲を移調した場合、
多くの人は特に専門的な教育を受けていなくても、
当たり前のようにそれが同じ曲として認識されます。
しかし、移調した曲は物理現象として見れば
周波数が異なる明らかに別の曲です。
にもかかわらず同じ曲として認識されるのは、
人間が1次元ではなく、
「2次元のシステムで音を捉えている」
からだと私は考えています。
2次元のシステム上、移調と言う操作は
「縦軸のシフト」
になります。
ここで重要なポイントは、
「移調は縦軸(調)だけが変化し、
横軸(周波数比)は平行移動するだけで一切変化しない」
そして、人間の感覚は周波数比に対応しているため、
「縦軸(調)は違っても横軸(周波数比)が同じであれば、
人間には同じ曲として認識される」
と言うことです。
ちなみに移調と言う操作を数学的に見ると、
半音上に移調するごとに各音の周波数に
2の12乗根≒1.059463
を掛けることになります(平均律の場合)。
移調は各音の周波数に同じ値を掛けるだけなので、
全体の(周波数)比は維持されます。
全体の(周波数)比が維持されると言うことは、
「合同だけではなく、相似も同じ図形として認識される」
感覚に例えることができます。
なお、
「トーン・ハイト」と「トーン・クロマ」
と言う2つの概念をこの2次元のシステムに当てはめると、
「縦軸をトーン・ハイト次元、横軸をトーン・クロマ次元」
として考えることができます(詳細はこちらの「クロマとは?」を参照)。
つまり、
「移調はトーン・ハイトだけが変わり、トーン・クロマは変わらない」
そして、
「トーン・ハイトは違ってもトーン・クロマが同じであれば、
人間には同じ曲として認識される」
と言い換えることができます。
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