「絶対音感は音を1つ1つ個別に捉えるために
音楽的な連なりとして捉えることができない」
これは絶対音感に対して懐疑的な人達の主張のようですが、
どうやらこの主張の根拠の1つとなっているのは、
絶対音感は移調した曲を同じ曲として認識できない、
つまり、
「別の曲に聴こえてしまう」
点にあるようです。
しかし、絶対音感上移調した曲が別の曲に聴こえてしまうのは、
全く別の理由だと私は考えています。
相対音感では移調しても周波数比を捉えるための観測点は
常に「調(調性上の主音)」になるため、
「クロマは変わりません。」
例えばメジャースケールはキーに関係なく
「ドレミファソラシド」
のクロマが認知されます。
クロマが同じであれば当然、感覚的に同じ曲として認知されます。
一方、絶対音感では移調すると周波数比を捉えるための観測点が
常に固定されているため、
「クロマが変わってしまいます。」
例えばCメジャースケールは
「ドレミファソラシド」
のクロマが認知されますが、Gメジャースケールでは
「ソラシドレミファ♯ソ」
のクロマが認知され、同じメジャースケールでも
キーによって違うクロマが認知されます。
クロマが違えば、感覚的に別の曲として認知されるのは
当然のことです。
なお、観測点の違いによる聴こえ方の違いは
こちらの記事を参照してください。
そして、もう1つ重要なポイントです。
ここでは簡単に「同じ曲」と表現していますが、
「では、一体何をもって同じ曲と判断されるのでしょうか?」
移調した曲は物理現象として見れば、
周波数が異なる明らかに別の曲です。
にもかかわらず、人間には同じ曲として認識されるのは、
「クロマが同じ」
だからです。
しかし、絶対音感では移調すると肝心なクロマが変わってしまいます。
では、トーン・クロマ次元でもなく、
もちろんトーン・ハイト次元でもないとすると、
「絶対音感は何をもって同じ曲と判断しているのでしょうか?」
残念ながら私には分かりませんが、非常に興味のあるところです。