実際、幼児期に行われる絶対音感訓練の中で
順調に訓練が進んでいる子供は聴音で
「音名(固定ド)の『ド』を『ド』」
と答えます。
しかし、順調に訓練が進んでいた子供でも
訓練が進むにつれて調(調性上の主音)、つまり
「階名(移動ド)の『ド』を『ド』」
と答える子供が出てくるようです。
これを
「移調のミス」
等と称して、絶対音感訓練の中では
「悪い傾向」
とみなされているようですが、
人間の成長過程から見ればそれは全く問題のない
「正常な傾向」
だと言えるでしょう。
ここで興味深いのは、
後者の子供は調性を捉える訓練を始めた訳でも、
と言うよりも調性と言う概念すら知らずに
今までと同じ感覚で答えているにもかかわらず、
自然と無意識のうちに調性を捉え、
「階名の『ド』を『ド』」
と答えるようになると言うことです。
「ドレミファソラシド」は「音律」と呼ばれる
「周波数比」が基盤になっています。
そして、「(周波数)比」と言うことは、
「(音を)比較する」と言うことです。
つまり、人間が「ドレミファソラシド」を
認知する過程においては
「(周波数)比を捉えるための基準となる概念」
が必ず存在するはずだと、
そして、この基準となる概念こそが
重要なポイントだと私は考えています。
この周波数比を捉えるための基準となる概念を
先ほどの絶対音感訓練の例に当てはめると、
周波数比を捉えるための基準が特定のピッチに固定された
「スタティック(静的)な音感」(前者)
から脳の発達と共に基準がフレキシブルに移動する
「ダイナミック(動的)な音感」(後者)
に取って代わったと私は考えています。
続「絶対音感は左脳が発達」のウソ