人間の脳の処理としては周波数比を捉えるための基準が
移動したほうが確かに高度な処理かも知れませんが、
音楽的には、
「基準が固定されていたほうが便利なのでは?」
「基準が移動することに意味があるのか?」
と疑問に感じる人もいるかも知れません。
この問題は最終的に「調性」と言う概念に
行き着くと考えられます。
「絶対音感は調性が分からない」
と言う人がいる一方、
「ハ長調にはハ長調の調性が、ト長調にはト長調の調性があって、
その違いを判別できる」
と言う絶対音感者もいます。
単刀直入に言えば、後者は「調性」ではありません。
「調性」と言う用語は「しばしば誤用」されていますが、
実はこの原因が周波数比を捉える基準が固定されていることに
起因しているのではないか?と私は考えています。
おそらく絶対音感者は理論上の「調性」と言う概念を
周波数比を捉える基準が固定された状態で聴こえた音に対して、
(相対音感訓練の中で)論理的に当てはめているだけではないか?
と私は疑いを持っています。
絶対音感者の中には、
「なぜ移動ド(階名)などと言うシステムが存在するのか?」
「なぜ移動ドなどと言う面倒くさいことをするのか?」
と疑問を感じている人もいるのではないでしょうか?
もし「調性」と言うものを論理的ではなく、
感覚的に理解していれば、
このような疑問は生じないでしょう。
「調性上の主音」は音律上、周波数比が「1対1」になります。
つまり、周波数比を捉えるための基準になります。
音(の振動)はサイン波で表されますが、
周波数比が1対1と言うことは
サイン波の周期が「ピッタリ一致する」と言うことです。
これが主音の持つ「安定した性質」を生み出しているのでは?
と私は考えています。
そして、この主音の安定した性質を感じ取るためには、
周波数比を捉えるための基準を「主音に合わせる」必要があります。
実はこの「調性」の問題を追及すると、なぜ絶対音感者が
「ベートーベンの『運命』はハ短調でなければ」
と感じるかにも1つの答えにたどり着きます。
また、本書では絶対音感者と非絶対音感者の感じ取る
調性の違いについても言及しています。
興味のある方は是非読んでみてください。
絶対音感の終焉