前回の「移調」の例に限らず、
でも述べた通り、重要なのは「表面的な結果」ではなく、
「それがどのように実現されているか?」
つまり、「how」だと私は考えています。
一般的に
「絶対音感は固定ド」
と言われていますが、その一方で
「移動ドでも視唱できる」
と言う絶対音感者もいます。
絶対音感者が「移動ド」と称しているのは、
多少の違いはあるかも知れませんが、
おそらく次のような手順ではないでしょうか?
①五線譜から音符を固定ドで読み取る
②固定ドのクロマを頭の中に思い浮かべる
③固定ドを論理的に移動ドに変換する
④移動ドの符号を発音する
そして、絶対音感者が移動ドを苦手とするのは
音高と固定ド(音名)が強固にラベリングされているため、
③④の過程で固定ドと移動ドが不一致を起こし、
赤青
と読むような違和感を覚える、いわゆる
「ストループ効果」
に原因があると考えられます。
おそらく絶対音感者が「移動ドで読める、読めない」と言う議論は
③④の過程が問題とされているのではないでしょうか?
(「音名」、「階名」と言う異なる概念に、
「ドレミファソラシド」
と言う同じ符号を使用していることの問題とも言えます)
一方、非絶対音感者の移動ドは次のような手順です。
①五線譜から音符を移動ドで読み取る
②移動ドのクロマを頭の中に思い浮かべる
③移動ドの符号を発音する
この中で実際に音感を使うのは②のプロセスだけです。
この「音高を頭の中に思い浮かべる」能力を
「内的聴覚」
と言います。
そして、移動ドの本質は
①「五線譜から音符を移動ドで読み取る」ことでも
③「移動ドの符号を発音する」ことでもなく、
②「移動ドのクロマを頭の中に思い浮かべる」
ことにあると、つまり
「その音高がどのようにイメージされるか?」
が重要で、そのイメージされた音高を具現化するときに
口でどのように発音するかは(例えば「あ」でも「ら」でも)
ラベリングが目的の場合は別として、
あまり重要ではないと私は考えています。
なお、ここで言うクロマはトニックソルファ法で言うところの
「精神的効果」
だと考えてください。
本記事では触れませんでしたが、
「非絶対音感+固定ド」と言う組み合わせも考えられます。
実際、絶対音感のない人でも移動ドは転調や無調に弱いと言う理由から
固定ドを採用している人はいませんか?
本書では移動ド(階名)の必要性、重要性について言及しています。
興味のある方は是非読んでみてください。
絶対音感の終焉