「其の一」で述べた通り、
私の考え方のポイントは非常に単純明快で、
「(周波数)比を捉えるための基準、言い換えれば
クロマを認知するための基準を『動かせる』/『動かせない』」
の一点だけです。
みなさんが思い浮かべる
と言う用語にはいろいろな要素が含まれていると思いますが、
その定義の曖昧さや余計な要素を議論から排除するため、
ここでは別の言葉を定義します。
まず、(周波数)比を捉えるための基準を「動かせない」、
つまり「基準が固定」された音感を
「固定音感」
そして、(周波数)比を捉えるための基準を「動かせる」、
つまり「調性上の主音を基準」とする音感を
「調性音感」
と呼ぶことにします。
「固定音感」には以下のような特徴があります。
・比を捉えるための基準が固定(あらかじめ「決め打ち」)された
「スタティック(静的)」な音感
また、自分自身が基準を持つ「自己完結型」の音感
・固定された基準との単純な関係性のため、
音楽的文脈に影響を受けることなく、
常に「確実に一意に」周波数比が定まる(クロマを認知できる)
・トーン・クロマ次元がトーン・ハイト次元から「独立していない」
→「ドレミファソラシド」を移調すると、
トーン・ハイトがシフトするのと同時にトーン・クロマもシフトし、
「ドレミファソラシド」が「ドレミファソラシド」ではなくなる
・クロマは「音名」と対応
一方、「調性音感」には以下のような特徴があります。
・比を捉えるための基準が調に応じて(調性上の主音に)移動する
「ダイナミック(動的)」な音感
・音楽的文脈に影響を受けるため、転調直後や調性が希薄なときに
周波数比が定まらない(クロマを認知できない)
・トーン・クロマ次元がトーン・ハイト次元から「完全に独立」
→「ドレミファソラシド」を移調してもトーン・ハイトがシフトするだけで、
トーン・クロマは「ドレミファソラシド」のまま「何ら影響を受けない」
また、移調だけでなく、基準ピッチの変更も
トーン・ハイトがシフトするだけでトーン・クロマは何ら影響を受けない
・クロマは「階名」と対応
そして、もう1つ重要なこと。
と主張する人もいますが、
周波数比を捉えるための基準の違いによる定義のため、
この2つの音感、つまり
「固定音感と調性音感は共存できません。」
この2つの音感の違いはみなさんが思い浮かべる
「絶対音感」と「相対音感」の違いに似ていませんか?
本書では2つの音感の違いを図例を交えて
詳しく解説しています。
興味のある方は是非読んでみてください。
絶対音感の終焉